転んだだけで要介護になるなんて!親の日常に潜むリスクとは?

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わずかな段差でつまずいたり、たまに走ると足がもつれたりして、転びそうになったことはありませんか?

30~40代を過ぎて日頃運動をしていない人は、腕や脚の筋肉が減り、おなか周りの脂肪が増えていきます。
加齢とともに身体のバランスが悪くなり、転倒しやすくなるのです。
さらに高齢者では、病気や薬の影響、視力の低下などで転倒のリスクが高まり、転倒が原因で寝たきりになる人も少なくありません。

「運動器障害」が要介護になった主な原因の第1位

2019年の国民生活基礎調査によると、骨折・転倒や関節疾患を含めた「運動器障害」※は、要介護になる原因の第1位。第2位は「認知症」、第3位は「脳血管疾患」でした。

比率をみると、運動器障害から要介護になった人は全体の24.8%で、4人に1人に上ります。
さらに女性では31.4%と高く、およそ3人に1人。女性は男性に比べて筋力が弱いため、運動器障害が起こりやすく、転倒のリスクも高いとされています。
そして、転んだだけで要介護になることも決して珍しくはないのです。
※運動器障害:骨折・転倒、関節疾患、脊髄損傷の合計

転倒への恐怖心が要介護のリスクを上げる!

若い人と比べると高齢者では骨折が治るのに余分に時間がかかります。
また、骨がつながるまでしばらく安静にしているうちに全身の機能が低下し、そのまま寝たきりになるケースもしばしば。
また、骨折が治っても、一度転んでけがをすると恐怖心が強くなる傾向があります。

転倒の心配から外に出なくなったり、あまり動かなくなったりすると、さらなる筋力低下を招き、サルコペニアやフレイルの要因になります。
サルコペニアは筋肉が減少し、筋力が低下した状態のこと。
フレイルは要介護の前段階と位置付けられています。

転びやすいのは、油断しがちな部屋の中

要介護になるリスクが高い転倒・骨折ですが、本人と周りの人が気を付けることで、防げる場合も多々あります。
お風呂の床を滑りにくいものにしたり、階段や廊下に手すりをつけたりといった対策はもちろん、部屋の中も見回してみましょう。
高齢者の転倒事故が最も多い場所は、意外にも居間やリビングです。
いつもの部屋で転倒する人が多いのは、油断しているからにほかなりません。

加えて、筋肉が衰え脳からの信号にうまく反応できないため、自分の感覚より足が上がっていないのです。
だから、カーペットの縁に足をひっかけたりします。床に置いた新聞や家電製品のコードも危険です。
転びそうになってつかまった机や棚が倒れると、下敷きになる可能性もあります。

こうした日常に潜むリスクを知っておけば、日頃から気を付けるようになりますし、環境を整えることで転倒予防につながります。

「転倒・骨折」を防ぐために、骨と筋肉を鍛えよう

しかし、転倒を防ぐには、環境を整えるだけでは不十分です。
骨粗しょう症や筋力低下があると、転倒しやすくなるといわれています。
特に、背中が丸くなってきた人は、骨粗しょう症の疑いがあるため要注意。また、歩く速度が遅くなってきた人は、筋力がかなり低下している可能性があります。
これらをきちんとケアする重要性はいうまでもありません。

骨と筋肉を鍛えるために、最も手軽で効果的な運動は「歩行」です。
転倒の不安がある人は、椅子に座って足踏みするところから始めましょう。
足裏からトントンという刺激が伝わることで、骨をつくる細胞が活性化されます。

まとめ

高齢になると、筋力低下や骨粗しょう症、視力の衰え、さらには薬の副作用などで転倒リスクが高まります。
転倒・骨折から要介護になる人も多いため、親がいる人は特に、日常に潜むリスクを知って、しっかりと対策しましょう。

転倒しにくい環境を整え、骨と筋力を鍛えるサポートをしてあげることで、防げる事故も多いはず。
まずは、こうした情報を日頃からきちんと伝えてあげること、そして本人がしっかり意識することが大切です。

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監修: 森 敦幸(もり のぶゆき)

医療法人幸鷺会 森整形外科リハビリクリニック 院長 。公益社団法人日本整形外科学会 整形外科専門医 日本スポーツ協会公認スポーツドクター

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文責:上辻 知津子(うえつじ ちづこ)

文責:上辻 知津子(うえつじ ちづこ)

管理栄養士・食育インストラクター 2000年からライター・編集者としてメディア制作に従事。業務を通じて食と健康に興味を持ち、2017年に管理栄養士資格を取得。現在は人間栄養学に基づいた健康記事の執筆活動を中心に、健康相談業務にも携わる。

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